数学史 095 ◆13世紀ヨーロッパ◆


 ◆13世紀ヨーロッパ◆

 13世紀の数学をどう考えようとも、その世紀が長い知的停滞後の世界の真の覚醒の時代であることは確かです。そのすぐ前の数世紀、ヨーロッパで数学に関する著述家を生み出してはきましたが、数学者は一人も産み出していません。しかし、今や、その時代の精神があふれ出すことになります。極東では、その影響を感じ、中国では代数の著しい復活発展が見られます。インドもそれを感じ取り、一世代前の、バスカラの優秀さを評価しました。そして、知的ヨーロッパのすべてが、これまでになくそれを感じていました。それは偉大なビーコン(水路標識)の光の世紀ではありませんでしたが、西洋のすべての大通りにかけられた灯り、ルネサンスの時代とともに来るべき偉大な啓蒙の時代が約束された世紀でありました。

 世界の数学の知識の発展において最も大きな影響を及ぼしたのは、もちろんずっと大学でした。私たちが現代の言葉の意味で、これらの組織制度の勃興を跡づけられるのは13世紀からです。最も初期の中世の大学は、大聖堂、すなわち教会の学校から成長してきたもので、その始まりの年代については、必然的に曖昧になります。しかし、多くの場合、何らかの君主、市民あるいは教会から公に特権を得た年代はわかっていますので、普通、それらは設立(創設)の年代として受け取られています。時に、二つの年代、国家から特権を得た年代と教会から得た年代とがあることもあります。

パリ大学は、1200年に国家から許可状を得、その学位は 1283年に教皇によって認められました。それに対応するオックスフォードの年代は、1214年と 1296年であり、ケンブリッジは、1231年と 1318年です。パドヴァ大学は、1222年に創設され、ナポリ大学は、1224年に創設されています。14世紀、15世紀にも、他に多くの大学が創立されるのを見られますが、私たちは、13世紀をこうしたタイプの高等教育の基盤が置かれた時代と見なしています。教えられた数学は、まだ、極めて貧相なものでありましたが。