◆ネブカドネザル王のものといわれている管弦楽団◆


ネブカドネザル王のものといわれている管弦楽団
 
 アッシリア帝国は BC612年に滅ぼされ、およそ70年間カルデアの王たちがバビロンを支配しました。中でも有名なのがネブカドネザル王です。旧約聖書「ダニエル書第三章」に、黄金の像の除幕式で彼の楽団が演奏したという有名な話が載っています。
 
 「To you it is commanded, O people, nations, and languages, that at what time ye hear the sound of the cornet, flute, harp, sackbut, psaltery, dulcimer, and all kinds of musick, ...」
 (Authorized King James Version)
 
 欽定訳では、こうなっています。しかし、最近の研究では、cornetと訳された qerenは cornetではなくむしろ horn、qayterosは、harpではなく kithara,lyreであることは確かなことのようです。
 
 他の楽器については、不確かな部分もあるのですが、おおかたの現代の学者の意見に従って、fluteがダブル・パイプ、sackbutが水平型ハープ、psalteryが垂直型ハープだとすると、このネブカドネザルの楽団は、前回述べたスサ王テウムマンの器楽アンサンブルと同じようなものではなかったかということです。dulcimerと訳された symponeyaについては、dulcimerでないことだけがわかっているのだそうです。
 
 新バビロニア帝国は、BC539年にキュロス王によって滅ぼされます。BC6世紀後半にピタゴラスバビロニアで学んだという話が、イアンブリコス(ヤンブリコス)によって伝えられていますが、ちょうどこの頃にあたります。
 
 私たちは、メソポタミア天文学と数学が高度に発達した状態を知っていますので、ピタゴラスメソポタミアから弦の長さと振動数の関係、数学的比率 1:2,2:3,3:4とオクターヴ(八度音程)、五度音程、四度音程との関係、更に、そうした比率によって宇宙が構成されているという概念も学んだとしても、決して不思議なことには思われません。