あとがき 095


 2008年もいよいよ残すところ今日1日となりました。明日からは 2009年です。それで、何かが変わるわけではないとは思うのですが、一年の区切りですので、新たな気持ちで一年を迎えたいと思います。

 世の中、あまりいい話はないのかも知れませんが、それでも希望を失わずに生きていきたいものだと思っています。

 それでは、皆さん、よいお年を!!

随想 095 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問(その5)◆


 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問(その5)◆


Q6. 環境へのリスク評価はどのようになされるのか?

 環境へのリスク評価は、関連する遺伝子組み換え作物と影響を受ける可能性のある環境との両方に及んでいる。評価のプロセスは、遺伝子組み換え作物の特性の評価やその影響、環境内での安定性を含み、その導入がされる環境の生態学的特徴と結び付けられている。その評価には、また、新しい遺伝子を組み込むことから意図せず結果生ずる可能性のある影響をも含んでいる。


Q7. 環境にとって不安となる問題は何か?

 懸念される問題には、遺伝子組み換え作物の組み換えた遺伝子が自然集団に入り込むのを避けられるか入り込むことが起こり得るのか、遺伝子組み換え作物の収穫後もその遺伝子は存続するのか、また、ターゲットでない生物(例えば、害虫でない昆虫)の遺伝子産物への影響、遺伝子の安定性、生物多様性の喪失を含む他の植物の多種多様性の減少、農業での化学物質の使用の増大などを含んでいる。遺伝子組み換え作物の環境への安全性の様相は、土地の状況に応じて、かなり異なっている。

 現在の調査研究は、益虫に害を及ぼす潜在的影響や耐性のある昆虫がこれまでより早く誘発されること、新しい植物の病原体の発生の可能性、植物の生物多様性や野生生物にとって害となる結果を生ずる可能性、また、地域の状況によっては、重要な輪作を行うことが減少すること、そして、他の植物への除草剤耐性遺伝子の導入(移入)に焦点が当てられている。

数学史 095 ◆13世紀ヨーロッパ◆


 ◆13世紀ヨーロッパ◆

 13世紀の数学をどう考えようとも、その世紀が長い知的停滞後の世界の真の覚醒の時代であることは確かです。そのすぐ前の数世紀、ヨーロッパで数学に関する著述家を生み出してはきましたが、数学者は一人も産み出していません。しかし、今や、その時代の精神があふれ出すことになります。極東では、その影響を感じ、中国では代数の著しい復活発展が見られます。インドもそれを感じ取り、一世代前の、バスカラの優秀さを評価しました。そして、知的ヨーロッパのすべてが、これまでになくそれを感じていました。それは偉大なビーコン(水路標識)の光の世紀ではありませんでしたが、西洋のすべての大通りにかけられた灯り、ルネサンスの時代とともに来るべき偉大な啓蒙の時代が約束された世紀でありました。

 世界の数学の知識の発展において最も大きな影響を及ぼしたのは、もちろんずっと大学でした。私たちが現代の言葉の意味で、これらの組織制度の勃興を跡づけられるのは13世紀からです。最も初期の中世の大学は、大聖堂、すなわち教会の学校から成長してきたもので、その始まりの年代については、必然的に曖昧になります。しかし、多くの場合、何らかの君主、市民あるいは教会から公に特権を得た年代はわかっていますので、普通、それらは設立(創設)の年代として受け取られています。時に、二つの年代、国家から特権を得た年代と教会から得た年代とがあることもあります。

パリ大学は、1200年に国家から許可状を得、その学位は 1283年に教皇によって認められました。それに対応するオックスフォードの年代は、1214年と 1296年であり、ケンブリッジは、1231年と 1318年です。パドヴァ大学は、1222年に創設され、ナポリ大学は、1224年に創設されています。14世紀、15世紀にも、他に多くの大学が創立されるのを見られますが、私たちは、13世紀をこうしたタイプの高等教育の基盤が置かれた時代と見なしています。教えられた数学は、まだ、極めて貧相なものでありましたが。

音楽史 095 ◆ダンスタブルとオールド・ホール写本の作曲家たち◆


 ◆ダンスタブルとオールド・ホール写本の作曲家たち◆

 この時代、聖エドモント大学(St.Edmund's College)、オールド・ホール・ウェアー(Old Hall Ware)に保存されている、はるかに重要なイギリスの資料が、1410-20年頃に編集されています。それには、王宮礼拝堂(Chapel Royal)のメンバー、クック(Cooke)(1453年没)、スタージョン(Sturgeon)(1454年没)とダメット(Damett) (1437年没)による、1415年、アジャンクール(エイジンコート)・イヤー(the Agincourt year)での勝利の祈願と感謝を捧げるアイソリズムのモテトゥスを含んでいます。

しかし、これらは技法的な巧みさにおいても音の透き通るような美しさにおいても、後の人の手によってオールド・ホール(写本)に加えられた別のモテトゥス、ジョン・ダンスタブル(John Danstable)(1453年没)の「Veni sancte Spiritus/Veni ceator/Mentes tuorum」によって超えられています。フランク・ハリソン(Frank Harrison)は、この(曲)はチャペル・ロワイヤル(王宮礼拝堂)が、1431年のノートルダムでの九歳年上のヘンリー6世の戴冠式で、ベッドフォード公の礼拝堂(付き聖歌隊)で歌われたかも知れないことを示唆しています。というのは、ダンスタブルは、ブルグンド公であるフィリップの同盟者であり、義理の兄弟であるベッドフォード公に仕えていたからです。

ベッドフォード公は、家臣の中にヨーロッパで最も才能ある音楽家たちの多くを抱えていました。そして、他のどんなイギリスの作曲家たちよりも -- カンタベリーのベネディクト会士、ライオネル・パウアー(Leonel Power)(1445年没)よりも -- その作品が、イギリスの資料よりも大陸の資料に多く保存されているのが、ダンスタブルでした。彼は、ブルグンドの巨匠を通して、イギリスの流れをヨーロッパ音楽に注入しました。

ブルグンドの宮廷詩人マルタン・ル・フラン(Martin le Franc)(Le Champion des dames, 1440年頃)によって選ばれただけでなく、「G.デュファイ(Du Fay)」やバンショワ(Binchois)が、「公の(高い)音楽と私的な(低い)音楽とを快く致させるための新しい実践(nouvelle pratique De faire frisque concordance En haulte et en basse musique)」を試みたのは、ダンスタブルによるものでした。

そして、一世代後のワロン人、理論家であり作曲家であるヨハネス・ティンクトリス (Johannes Tinctoris)(Proportionale musices c.1474)は、「私たちの音楽の可能性は、非常に驚くほど増大し、新しい芸術が現れたように思える・・・。その起源は、イギリス人たちの中に保持されており、その中でもダンスタブルは第一人者である。1508 年になっても、Livre de la Deablerie の中でエロワ・ダメルヴァル(Eloy d'Amerval)は、「偉大な音楽家たち(grans musiciens)」のリストの冒頭に「ダンスタブルとデュファイ(Dompstaple et du Fay)とを挙げている。」と明言しています。

あとがき 094


 今日で11月も終わり。明日から師走です。今日は、少し北風(北西の風)が強く感じられます。

 また、今日からアドヴェント待降節)が始まります。欧米では、アドヴェント・カレンダーを毎日見ながら、クリスマスまで、あと何日と待ちわびるのでしょうか。日本も、かつては「もういくつ寝るとお正月・・・」なんて歌がよく歌われていましたが、それとよく似ていますね。

 日本の師走同様、年末の慌ただしい時期でもあります。

随想 094 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問(その4)◆


 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問◆


Q5. 人間の健康に関する懸念の主要な問題は何か?

 理論的な議論が、幅広い範囲の局面でなされている一方で、論争となっている3つの主要な問題は、アレルギー反応を引き起こす傾向(アレルギー誘発性(allergenicity))、遺伝子導入(gene transfer)と異系交配(outcrossing)である。

 アレルギー誘発性:原理的に言うと、一般のアレルギー性食物からの遺伝子導入は、それが導入された遺伝子のタンパク質産生が、アレルギーを引き起こさないことが証明できなければ、阻止される。伝統的に開発された食物が、一般的にアレルギー誘発性のテストは行われない一方、遺伝子組み換え作物のテストの手順は、国連の食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)とに評価されている。現在、市場に出回っている遺伝子組み換え作物には、いかなるアレルギー性の影響も見いだされていない。

 遺伝子導入:遺伝子組み換え食物から身体の細胞や消化管(胃腸管)内のバクテリアへの遺伝子導入は、もし導入された遺伝子の物質が人間の健康に悪影響を与えるなら、懸念を引き起こすだろう。これは、遺伝子組み換え作物を創り出すのに使われた抗生物質耐性遺伝子が、万一遺伝子導入されるようなことがあると、特に関連があるだろう。遺伝子導入の可能性は低いが、抗生物質耐性遺伝子を用いない技術が、最近の FAO/WHO 専門家パネル(専門委員会)では、推奨されている。

 異系交配:これまでの伝統的な一般の種からできた作物と遺伝子組み換え植物を育てた作物とが混ざることだけでなく、遺伝子組み換え植物の遺伝子がこれまでの一般的な作物や野生の関係する種に交じることも、食物の安心安全性に間接的な影響を与えているかも知れない。このリスクは、アメリカ合衆国で、飼料用のためだけに認可されたタイプのトウモロコシの痕跡が、人間の消費のためのトウモロコシ製品にあったことが示しているように、現実的なものとなっている。国によっては、遺伝子組み換え作物とこれまでの伝統的な作物とを栽培する畑を明確に分けることを含め、混入を減らすための戦略を打ち出している国がいくつかある。

 市場流通後も遺伝子組み換え作物製品の安全を継続して監視することの実行可能性と方法は、現在議論中である。

数学史 094 ◆12世紀以降のアラビアの著述家たち◆


 ◆12世紀以降のアラビアの著述家たち◆

 12世紀の西方アラビア人の算術に関する著述家の中で、最もよく知られた人の一人は、アブ・ベクル・モハメド・イブン・アブダラ(Abu Bekr Mohammed ibn 'Abdalah)、一般には、アル・ハッサル(al-Hassar)として知られている人物でしょう。彼の著作は、あまりに広く知られていたので、すでに述べたように、モーゼス・ベン・ティボンによってヘブライ語に翻訳されています。(1259年)

 13世紀初め、キリスト教徒の呼び名で、アルペトラギウス(Alpetragius)という人が、スペインの、恐らくセヴィリャに住んでいて、天文学について著述しています。(1200年頃)彼の惑星の運動の理論、
その著作が彼を数学の著述家としての地位を与えたのですが、マイケル・スコット(Michael Scott)によってラテン語に訳されました。

 アルペトラギウスと同時代の人に、イブン・アル・カティブ(Ibn al-Katib)(1210/11年没)という人物がいました。彼は、算術、幾何学と建築についての若干の議論を含む二つの著作を書いています。

 13世紀に、地理的にスペインの文明と緊密な関係にある北アフリカで生まれた学者の中で、最もよく知られているのは、アルバンナ(Albanna)、すなわちイブン・アル・バンナ(Ibn al-Banna)です。彼は、アル・マラクシ(al-Marrakushi)としても知られているという事実から、私たちは、彼はモロッコ生まれであったと推測しています。彼は、天文学、計量、代数、アストロラーベ、そして比について著述しています。彼の最もよく知られた著作は、算術の論文である「タルキス(Talchis)」です。

 また一人、イブン・ベドル(Ibn Bedr)として知られるセヴィリャのイスラムの学者がいました。彼は、当時の代数の概論(要約)を書いています。年代は不確かですが、1311/12年に韻文で書かれた注釈があります。

 スペインのムーア人の偉大な算術家の最後の人物は、アル・カラサディ(al-Qalasadi)です。グラナダの近くの町、バザ(Baza)の生まれで、算術について広く著作をし、数の理論の扱いにおいて、ある独創性を持っていたように思えます。