2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

中世からルネサンスへ(その4)

フランドル楽派の出現 世紀の変わり目頃には、教会のポリフォニー音楽が北イタリア一帯で盛んになり、それに伴って、イタリアの作曲家より外国人音楽家、多くはフランドル地方とその周辺からやってきた人たちですが、目立つようになります。アルス・ノヴァな…

中世からルネサンスへ(その3)

14世紀フランスのその他のミサ作品 14世紀フランスのポリフォニー音楽には、組曲風ミサ以外にミサのために書かれた単独作品もかなり見つかっています。ノートルダム楽派とは対照的に、固有文は姿を消し、通常文ばかり目立つようになっていますが。 ポリ…

中世からルネサンスへ(その2)

アルス・ノヴァの記譜法 大きな音符を小さな音符に分割する場合、3つに分ける(完全分割)か2つに分けるか(不完全分割)の2通りがあります。ロンガとブレヴィス、ブレヴィスとセミブレヴィス、セミブレヴィスとミニマのそれぞれに応用します。曲を書くと…

中世からルネサンスへ(その1)

アルス・アンティカ 13世紀半ば、楽譜の世界に画期的な発想が生まれます。音の長短を異なる形の音符で示そうとする思いつきです。これによってヨーロッパの音楽は、特にポリフォニーが急速に発展することになります。 そのことを最初に明確な説明をしたの…

中世盛期のポリフォニーと宗教歌曲(その4)

聖母マリアのカンティガ集 カンティガは、一般にはラウダのスペイン版で、ほぼ同じ頃流行した宗教歌曲と考えられていますが、現存するのは、カスティーリャとレオンの国王アルフォンソ10世が 1250年から30年かけて編纂させたという「聖母マリアのカンテ…

中世盛期のポリフォニーと宗教歌曲(その3)

十字軍時代の中世歌曲 オルガヌムやコンドゥクトゥスが、アキテーヌやパリを中心に教会でポリフォニー音楽の1つの頂点を極めていた12・13世紀、教会の外では、十字軍の活動が活発でした。それを支えていたのは、各地の王侯貴族とそこに結集した騎士たち…

中世盛期のポリフォニーと宗教歌曲(その2)

アルベルトゥス師作のコンドゥクトゥス 「カリクスティヌス写本」の中に「パリのアルベルトゥス師の作」と記された「ともに喜べ、カトリック信者たちよ(Congaudent catholici)」という曲があります。 この曲には3つの旋律が記されているのですが、3つ全部…

中世盛期のポリフォニーと宗教歌曲(その1)

ウィンチェスターのトロープス集 楽譜として残されたオルガヌムの最初のコレクションは、南イングランドのウィンチェスター大聖堂で用いられていた2冊のトロープス集に含まれています。すべて2声部で、音の高さを明示しないネウマ譜で書かれています。これ…

グレゴリオ聖歌の変容(その4)

最古のポリフォニーの資料 聖歌の旋律に対旋律を付けて同時に複数の旋律を歌おうというオルガヌムが、いつどのようにして起きたかは、いまだに謎です。 そのような演奏が行われていたと9世紀後期(一説では10世紀初期)の音楽の教科書である「ムシカ・エ…

グレゴリオ聖歌の変容(その3)

ダニエル物語とコンドゥクトゥス 典礼劇の中で最もよく知られているのは「ダニエル物語」でしょう。12世紀半ば北フランスの古都ボーヴェーの「若者(神学生)たち」によって演じられたことが知られており、この作品唯一の原典は、大英図書館に保管されてい…