◆ギリシア--ホメロスの音楽◆


 ◆ギリシア--ホメロスの音楽◆ 
 
 さて、今回からギリシアに入ります。
 
 ギリシアの楽器で最も古いものは、アテネのデュビロン近くの墓から出土した幾何学時代(BC8世紀)の花瓶に描かれているものですが、それはミケーネやフェニキアのリラを簡略化したものだそうです。
 
 1世紀後の「黒絵陶時代」の壺には、スペクトラムで演奏された7弦のリラが描かれています。これは、4弦あるいは7弦の楽器で、ホメロスは、それをフォルミンクスと呼んでいます。
 
 アポロンイーリアスの第1歌の終わりに演奏するのはフォルミンクスです。また、オデュッセウス随行員とともに、アキレウスを幕屋に訪れたとき、アキレウスは銀の横木のついた美しい作りのフォルミンクスの伴奏に合わせて歌を歌っています。
 
 アキレウスの盾には、若者たちがアウロスとフォルミンクスの音に合わせて踊っているのが描かれているのですが、それは、アウロス、すなわちダブル・パイプに言及した最も古い時期の文献の一つだそうです。盾には、もう一つシュリンクス、すなわちパンの笛が描かれています。イーリアスの第10歌の初めで、アガメムノンは、トロイ人たちがアウロスとシュリンクスを吹いているのを聞きます。
 
 しかし、私たちに(現代まで)伝わっている最も古い実物のシュリンクスの絵は、ホメロスの時代より後のものです。フィレンツェの考古博物館にある花瓶に描かれたカリオペーによって演奏されている、長さの同じ9管のシュリンクスが、恐らく最も古いものではないかということです。シュリンクスは、新しい型の楽器で、起源は恐らくギリシアであろうと考えられ、常に牧童と関連しています。