◆固有名詞の表記◆


◆固有名詞の表記◆
 
 アキレウスは、アキレスではないのですかという疑問を抱いた人がおられるようですので、今回は、固有名詞の表記について少しお話します。
 
 日本では、どういう訳か固有名詞の表記は原音主義(?)ともいうべきものを採用していますね。私も、一応これに従って固有名詞を表記しようと心がけています。とは言っても、私自身、ギリシア語読みとラテン語読みとを混同してしまったり、全く知らない言語の場合、ローマ字読みにしたりすることもあるのですが。
 
 ホメロスの作品は、ギリシア叙事詩ですので、固有名詞の表記は、ギリシア語読みを基本としています。アキレウスの場合、ギリシア語では、Αχιλλευsで、「アキレウス」とするのが一番近いでしょう。ラテン語になりますと、Achillesでアキレースとなりますね。Achilleusという単語もありますが、これは形容詞で「アキレスの」という意味です。
 
 日本語では、アキレウスよりアキレスの方が一般的な感じがしないわけではありませんが、そういう理由からアキレウスとしています。
 
 他の言語を見てみますと、最も一般的なものは英語の Achillesですが、これは「アキリーズ」と発音するようですね。フランス語では、Achille「アシル」、ドイツ語では、Achilles「アヒレス」ですね。ついでに、ロシア語では、Ахиллес「アヒレース」、中国語では、阿基里斯 a-ji-li-si(声調は 1-1-3-1)で「アチリス」でしょうか。
 
 ヨーロッパ人は、意外に自国語の発音にこだわるようで、Miami(マイアミ)をイタリア人は「ミアーミ」と言ってゆずらなかったという話をどこかで読んだことがありますので、あまりこだわる必要はないかも知れません。
 
 ただ、ホメロスギリシア語読み)をホーマー(英語読み)ならまだしも、ガメール(ロシア語読み)といわれると、恐らくわかる人はいないのではないでしょうか。