◆ギリシア--音楽の重要性◆


ギリシア--音楽の重要性◆ 
 
 ギリシアでは、音楽は他の地域、メソポタミアやエジプトでは見られないほど重要なものでありました。ギリシア人は音楽をムシケー・テクネー、つまりムーサ神の技芸と呼んでいますが、そのムシケーという言葉は、私たちが今日音楽という言葉で表すものよりも意味が広く、詩や踊りなども含んでいます。
 
 ギリシア人の精神にとっては、音楽、詩、踊りといった要素に分かれる以前に存在していた総合的なものとして意識され、ごく自然に受け取られていたようです。
 
 音楽は体育でも用いられていたことが知られています。体育の競技会は、オリンピアード(現在ではオリンピック)として知られていますが、音楽も競技会が開かれていたようです。それは祭典の一部と言われ、アルゴスのサカダスが6世紀初めデルフィでアポロン神を祝して開かれたピュティアの祭典でアウロスの競技で勝利をおさめたことはよく知られていますね。
 
 また、ギリシア人たちは音楽が道徳や制度を形成したりコントロールしたりする上で最も重要な要素であるとさえ考えていました。よく知られている音楽の倫理的治癒力というのは、伝統的には半ば伝説上の人物、フリギアのアウロス奏者、オリュンポス(BC700年頃)とその弟子、クレタ人のタレタス(BC665年頃)と結びつけられています。
 
 この二人は、ピタゴラス学派の教えの中で重要な地位を占めています。残念なことに、その伝承がピタゴラス学派によるものかどうかは不明なのですが、ピタゴラスが、こうした教えをバビロニアから学んだという可能性は十分残されているでしょう。