◆ローマの音楽◆


◆ローマの音楽◆ 
 
 ローマは、三つの主要な要素--エトルリアギリシアと東方(オリエント)--から成り立っていると、ずっと言われて来ました。ローマに影響を及ぼした年代を考える上ではこの三つの区別は重要かも知れませんが、実際のところ、その三つの要素は非常に緊密に関連しあっていて、区別するのはきわめて難しいということです。
 
 ギリシア音楽が東方(オリエント)の音楽と深く関わっていることは、すでに見てきましたし、エトルリア人は、恐らく小アジアから移住して来た人々で、言語的にはリディアと関係があると考えられているように彼らはギリシア文明から大きな影響を受けていたからです。
 
 音楽に関していいますと、ローマでなされた唯一ともいってよい革新はラッパ(トランペット)の類においてだろうということです。ローマ人は、恐らく直管型トランペット--サルピンクスやトゥーバ(tuba)--を知っていたでしょうが、石棺や墳墓には、円く曲げられたベルのついたリトゥウス(lituus)やコルヌ(cornu)と呼ばれるホルン系の楽器が描かれています。これらは、軍事目的、あるいは宗教的儀式で用いられました。
 
 ローマの音楽というと、どうしても軍国主義的な音楽を思い浮かべてしまうのですが、ローマ人の楽器と音楽の使用は、全般に地中海の人々と共通のもので、ローマ人が近隣諸国ほどには音楽的でなかったという証拠はありません。それどころか、あらゆる社会活動、労働や娯楽、儀式や祝祭、また、諷刺歌や恋愛歌、酒宴歌など、あらゆる場面で歌が採り入れられていたことを示す多くの証拠があります。
 
 次回は、そうしたことに触れてみましょう。