◆オルガンの起源◆


◆オルガンの起源◆
 
 前回、風圧を一定にする空気袋を利用することで、バッグパイプが生み出され、その基本的原理は、アレクサンドリアの科学によってオルガンを生み出したというお話をしました。オルガンの語源は、オルガノン、「楽器(道具)」という意味のギリシア語です。しかし、オルガンの起源について、実は、はっきりとしたことは分かっていません。
 
 紀元2世紀に、アテーナイオスによってまとめられた伝承(食卓の賢人たち)によりますと、「オルガノン・ヒュドラウリコン」すなわち「水圧アウロス(hydraulos)」の発明は、BC3世紀半ばの技術者アレクサンドリアのクテシビオス(Ctesibius)によるものとされています。彼は、様々に圧縮された空気、特に水の重さによって圧縮された空気の力を巧みに利用する機械を発明しています。
 
 また、同じく、アテーナイオスによれば、アレクサンドリアの詩人がアルシノエ2世(ArsinoeII)の神殿に置かれていた杯、リュトンについて描写しているといいます。それは、水を注ぐとラッパのような音を出したということです。これは、恐らく一つの音しか出さなかっただろうと思われますが、クテシビオスによるものだとしています。
 
 一方、H.G.ファーマーによって引用されたアラビアの論文では、水圧によって楽器に空気を送り、また、それと同じように動くアウロス奏者の小像を作ったのは、クテシビオスと同時代のアルキメデスであろうと言っています。テルトリアヌスは、実は、水圧アウロスの発明者をアルキメデスだとしています。
 
 BC3世紀の終わり頃、アレクサンドリアに住んでいたと考えられているビザンティウムのピロン(Philo of Byzantium)は、その「機械論」の中で、クテシビオスの円筒形のポンプについて語り、その実用性は「両手で演奏される水圧アウロスとして知られるシュリンクス」によって証明されていると語っています。機械的に動くシュリンクスは、明らかにオルガンの原型であったでしょう。ピロンは、クテシビオスがそれを発明したとは語っていませんが。
 
 ともかく、アウロス(管)を演奏する自動装置の著しい進展があったことは確かであり、彼の証言は、それが初期ヘレニズム時代に存在したことを示しています。