◆クテシビオス◆


◆クテシビオス◆
 
 音楽史で出てきたクテシビオスについて一般的に言われていることを少し書いておきましょう。(上で書きましたようにクテシビオスが「水圧アウロス」の発明者だという確かな根拠はないようですが。)
 
 彼のことは、ほとんど分かっていません。古代の歴史家に言及されているだけで、著作は存在しません。彼は、アレクサンドリアの床屋でした。彼の最初の発明は、お客の高さに合わせるように重りと釣り合うようにした鏡だと言うことです。
 
 彼は、初期のいろいろなポンプを発明し、持続した音が出せるように、送風楽器と結びつけようとしました。しかし、それでは、一つの音しか出せません。ある時、圧力を加えたまま空気を蓄えておくことができることに気が付きます。ポンプと楽器を繋ぐのではなく、空気を蓄えたところと楽器を結びつけることで、水圧オルガンを発明します。これは、オルガンのパイプに空気を通すバルブを操作することで演奏されました。
 
 彼は、また、17世紀になるまで超えられなかった正確さを持つ水時計を発明といいますか、改良もします。アレクサンドリアの法廷では、被告人はある一定の時間、話すことが許されませんでした。その時間を公平に計るのに用いられた装置がクレプシュドラでした。それは、単なる穴の開いた壺です。罪の重さに応じて一定の量の水を注ぎ込んで、水がなくなるまで話してはいけなかったのです。
 
 簡単で公平であるといっても、幾分不正確でした。クテシビオスは、そのクレプシュドラを改良しようとしたのです。クテシビオスは、水が一杯の時のほうが空になって来たときより水の落ちる時間が早いことに気づきます。これを解決した彼の方法は、簡単です。壺の水を常に一杯にしておくことでした。彼は二つ目の壺を用意し、そこには最初の壺より大きな穴を開けることで最初の壺が空にならないようにしました。
 
 しかし、決して空にならないクレプシュドラでは、何の役にも立ちません。そこで、出てくる水の量を量る方法を見つけなければなりませんでした。彼は、三つ目の壺を用意し、そこに針(目盛り)のある浮きを浮かべたのです。
 
 水の代わりに、重りを使った機械時計が14世紀に現れます。16世紀には、ガリレオが振り子の原理を発見します。こうして、現代の時計の要因はすべて整いますが、1657年、オランダの物理学者クリスティアン・フイゲンス?(Christiaan Huygens)が時計を正確に刻むために振り子をどう利用するかを明らかにするまで、1800年前に発明されたクテシビオスの時計より正確な機械時計はありませんでした。
 
 参照 BBC Historic Figures
 http://www.bbc.co.uk/history/historic_figures/ctesibius.shtml