◆音価(音の長さ)の記譜◆


 ◆音価(音の長さ)の記譜◆

 西洋音楽は、音程を示す合理的で満足のいく方法を獲得していましたが、ポリフォニーは、また、満足のいく音価を示す方法を必要としていました。名前不詳のウァチカヌスという人は、テキストの音節の韻脚(feet)と関連するブレヴィス(breves)とロンガ(longae)について語っています。

また、スコリア・エンキリアディス(Scholia Enchiliadis)の写本の一つには、「私たちは、短音と長音とを区別するためにプンクトゥム(puncti)とウィルグラ (virgulae)とをおいた。」と書いてあります。その関係は明らかです。二つの短音は一つの長音に等しい、でした。プンクトゥムは、"."で、ウィルガ (virga)あるいはウィルグラ(virgula)は、アクトゥスのような斜めの線 "/" でした。あるいは水平な線(これは virgula jacensと呼ばれ、ブレヴィスと解されるときもある。)のようなものでした。

複合形のネウマのうち一つか二つは、いわば、二つの短音と一つの長音を示すことができましたが、実際は、それは体系的なものでもなければ、明確なものでもなく、時折、この長短を伴ったプンクトゥムとウィルガの方程式は、明らかな矛盾に陥ります。別の一節では、同じ著者が、「リズミカルな(韻律的な)歌い方(numerose canere)」は、テキストの長い音節と短い音節を数学的に正確に長短と一致するものとして記述していますが。

しかし、彼はモノフォニーの歌についてだけ語っているのです。オルガヌムは、非常にゆっくり演奏されるので、リズムに注意を払うことはほとんどできないと言っています。実際、最も初期の一音対一音のオルガヌムは、非常に注意深く演奏されたに違いありません。そして、オルガンの比較的ぎこちないメカニズムによって、速度は一層遅くなったことでしょう。