初期キリスト教会の音楽(その2)


 初期キリスト教会の伝統

 今日なお、それぞれの伝統を守り続けている例があります。

 西シリアのヤコブ派教会(シリア正教会)では、アラム語の聖歌が歌われています。
 アルメニア教会の聖歌は、古アルメニア語。
 南エジプトのコプト教会は、アラビア語
 エチオピア教会(アビシニア教会)では、ゲエズ語という地方語で聖歌が歌われています。
 ギリシア正教会のビザンツ聖歌は、ギリシア語。
 ロシア正教会の聖歌は、ロシア語。

 これらが、初期キリスト教時代のもとの形をどれだけ残しているのかは疑問ではあるのですが。

 初期キリスト教会では、いずれのグループも聖務日課聖餐式が重要な行事でありました。しかし、初期の聖歌がどのような性格のものか、それを暗示する手がかりさえ、全く残されていないのです。

 イエスとその弟子たちが礼拝において楽器を用いたという記述は全くありませんし、反対に、礼拝で器楽の演奏を禁止したという形跡もありません。
 しかし、やがて、楽器に対する反感が次第に初期キリスト教会に広がっていきます。
 特に、楽器を徹底的に批判したのは、アンネス・クリュソストモスで、彼が確立したといわれる典礼を伝統的に守っている東方教会では、今日に至るまで、教会での楽器の使用を禁じ、聖歌は、すべて無伴奏で歌われています。

 最古の聖歌の楽譜

 1922年エジプトで発見されたパピルスの断片に記されているもので、現在オックスフォード大学のアシュモール博物館に保管されており、発見された土地の名をとって、オクシリンコス賛歌として知られています。