◆零の歴史(その3)◆


 ◆零の歴史(その3)◆
 http://www-history.mcs.st-andrews.ac.uk/history/HistTopics/Zero.html

 このことから、私たちは、空の場所を示す零の初期の用法は、本当は数としての零の用法ではまったくなく、単なる数字を正しく解釈するためのあるタイプの句読点記号の用法に過ぎないことが分かります。

 ところで、古代ギリシア人たちは、バビロニア数学で、空の場所を示す記号として零を使用していた時代の頃、数学に貢献を始めました。しかし、ギリシア人は、位取り記数法の体系を採用しませんでした。この事実がいかに深い意味を持つものか考えてみるだけの価値はあるでしょう。ギリシア人の輝かしい数学の発展の中で、どうしてバビロニアの位取り記数法が持つあらゆる有利さにもかかわらずその数体系を採用することができなかったのか。この問いへの本当の答えは、私たちがまさにこれから与えようとする単純な答えより微妙ですが、基本的には、ギリシア数学の達成は、幾何学に基づいていたということです。ユークリッド幾何学原論には、数の理論についての巻も含まれていますが、それは幾何学に基づくものです。言い換えるなら、ギリシアの数学者たちは、直線の長さとして数を用いていたので、数を名付ける必要はなかったのです。記録のために数字の名前が要求されたのは、数学者ではなく、商人で、彼らによって用いられました。それで、それ以上優れた記数法は必要とされなかったのです。

 さて、今、私たちが言ったばかりのことに例外があります。その例外とは、天文学のデータを記録していた数学者たちです。ここでは、今日、零の記数法として認められる象徴記号の最初の用法を見出します。というのは、ギリシア天文学者たちが、記号0を用い始めたのです。なぜこの特別な記数法が用いられたのか多くの理論(説明)がありました。それは何もないことを表すギリシア語の単語 "ouden"の最初の文字オミクロン(Ο)であるという説明を好む歴史家がいます。しかし、ノイゲバウアーは、ギリシア人は、すでにオミクロンを数字として使っていたことから - それは70を表します(ギリシアの数体系はアルファベットに基づいています) - この説明を退けます。それは "obol" - ほとんど価値のないコイン - の意味で、砂の計算板(盤)で数えるのにカウンターを使ったときに生じた事実によるとする別の説明もあります。ここで示しているのは、カウンターが空の空間(位)になるよう取り除けられると、砂に0のように見える窪みが残るということです。