◆フランコ式記譜法◆


 ◆フランコ式記譜法◆

 記譜法の体系化への大きな一歩前進は、すでに述べた「計量音楽技法(Ars cantus mensurabilis)」の中でケルンのフランコによってなされました。モドゥス・ペルフェクトゥスについてまだ考えながら、彼は6つの旋法の衰退を認めてはいるものの、不規則のように思える音の連続をどのようにしたらペルフェクチオに分類できるかを説明しています。例えば、一つのロンガの後に4つのブレヴィスが続くなら、最初のブレヴィスはそれを不完全(ノンペルフェクチオ)なものとし、他の3つはそれ自体一つのペルフェクチオを形成します。もしロンガの後に5つのブレヴィスが続くなら、5番目のブレヴィスはそれに続くロンガを不完全にします。状況によっては、1つのブレヴィスが均整を整えるために二倍にされることもありました(brevis altera)。

フランコは、また、セミブレヴィスのグループ化の規則もあげています。その対は、彼の体系では、マイヨール(major)とミノール (minor)、つまりブレヴィスの 2/3と 1/3であって、1/2と 1/2とではありません。何より最も重要な事は、彼はリガトゥーラの体系を成文化したことです。それは、単純なブレヴィス-ロンガやロンガ-ブレヴィス-ロンガ以外のパターンを示すことができるようある変化が進行し始めていたことを示しています。これらのオリジナルの形は、プロプリエタス (proprietas)とペルフェクチオを持っていると言われていました。フランコは、そのプロプリエタスの最初の音(それをロンガにする)あるいはペルフェクチオの最後の音(それをブレヴィスにする)を取り除くという体系的な変更を提案しました。

 フランコの記譜法が一般に知られ採用されるようになるには、当然のことながらしばらく時間がかかりました。その特徴のいくつかは彼以前から使用されてはいましたが。Moの中では、フランコの論文の40年後の第7分冊と第8分冊まで現れません。第7分冊の最初の二つのモテットは、ペトルス・デ・クルーケ(チェ)のものとされていますが、実際には、フランコのものより進んでいます。ペトルスは、モテットのトリプルムの中に、プンクトゥムで切り離しほとんどしゃべるような仕方で繰り返される音を用い、ブレヴィスの音価を7つのセミブレヴィスまでのグループに分ける方法を導入しています。

演奏では、これらは速度が遅くなることを伴い、その結果、ブレヴィスは今や以前のロンガとほとんど同じ長さになっています。これは、繰り返し用いられることで、ついには最も長い音の名としてイギリスの音楽用語で普通に用いられる「セミブリーヴ(semibreve)(全音符)」になりました。ドイツ語では ganze Note, アメリカ英語では whole-noteと言われるものです。