◆ギリシア--タレス(その2)◆
◆ギリシア--タレス(その2)◆
タレスは、天文学に多くの関心を抱いていました。ヘロドトスは、私たちに日食の予言に成功したと語っています。この日食は、BC585年5月28日に起こったものだと考える人もいれば、それより25年後のものだと考える人もいるようです。タレスは、カルデアの記録の研究から、こうした情報を得たのかも知れませんが、それがタレスの情報ソースであったかどうかは分かりません。
幾何学では、平面図形の最も単純な命題のいくつかがタレスによるものとされています。それを挙げて見ますと、
1.どんな円も直径によって半分にされる。
2.二等辺三角形の底角は等しい。
3.二本の直線が交わるとき、対頂角は等しい。
4.半円の(円周)角は直角である。
5.相似な三角形の各辺の比は一定である。
6.二つの角と一つの辺がそれぞれ等しい二つの三角形は合同である。(ユークリッド、I.26)
幾何学の命題としては、直感的に得られるもので、余りにも単純ですが、正に、その単純さが、エウデモス(Eudemus)(BC335年頃)その他の初期の著述家たちが言及したように、タレスがその証明をした人物であったと私たちに信じさせるものです。この時まで、幾何学は、ほとんどもっぱら平面や立体の測定に限られていました。
D.E.スミスによりますと、タレスの偉大な貢献は、直線(点の軌跡)の幾何学を示唆し、テーマを抽象化したことにあります。タレスにおいて、私たちは、初めて論理的証明を幾何学に適用するという考えと出会います。タレスが、数学という学問の偉大な創始者の一人と見なされ、正にそうであるのは、この理由からだということです。
哲学においては、タレスは「水は万物の根源である。すべては神々で満たされている。魂は運動を生ずるものである。物質は無限に分割できる。」などと主張したと言われていますが、タレスは、何も書物を残さなかったので、その確証はありません。