◆6世紀◆


 ◆6世紀◆

 6世紀は、かなり価値のあるいくつかの著作が現れたということで、中国の数学の歴史の中で重要な時代です。優れた著述家の中で、もっとも初期の人は、恐らく、学識ある仏僧、甄鸞(Chon Luan)でしょう。彼は、535年には生きていたように思えますが、その世紀の後半に暦を考案しています。彼は、五経算術(Arithmetic in the five classics)を書いていますが、その中に、それ以前の著作の中に現れた標準型の様々な問題が含まれています。彼は、また、それ以前の論文のいくつか、例えば、周髀と九章算術についても注釈を書きました。

 甄鸞(Ch'on Luan)と同じ頃に、恐らく、張邱建(Ch'ang K'in-Kien)(575年頃)も生きていたでしょう。彼の書いた3書の算術、張邱建算経(Chang Kiu-kien Suan-king)は、ほとんどすべてが現存しています。その著作は、主として、分数に関するもので、著者が割る数の逆数を掛けるという現代の除法の規則を知っていたことは、全く明らかなように思えます。また、算術的数列、比例算(三項法)(The Rule of Three)、計量や不定一次方程式も扱っています。

 甄鸞(Ch'on Luan)と同時代のもう一人は、今日現存する論文、夏侯陽算経(The Hsia-hou Yang Suan-king)(Arithmetic Classic of Hsia-hou Yang)の著者である算術家、夏侯陽(Hsia-hou Yang)(575年頃)です。この著作は、こうしたほとんどの著作がそうであったように、算術の過程の扱いだけでなく、測量術についての問題もいくつか含んでいます。算術の問題は、すべて、乗法、除法と割合とを含んでいます。