◆マハーヴィーラの著作◆


 ◆マハーヴィーラの著作◆

 著作(ガニタ・サーラ・サングラハ)自体は9章からなっています。第1章は序論(導入)で、主として用いられる単位、演算、数え方(命数)、負の数と零に言及しています。8つの数の演算法が与えられていますが、加法(級数を除く)と減法(分数の減法さえ)は、あたかも必要条件であるかのように省略されています。

興味のある特徴は、零に言及している規則で、こう述べられています。「(零をかけた数は=ある数に零をかけると)零であり、その[数]は、零で割られても、零を加えられても、減じられても変わらない。」すなわち、バスカラによって、零で割るときに与えられた規則は、ここでは認められていず、零による除法は効果がないとみなされている点です。

負の数による乗法は述べられていますが、虚数は次のように処理されています。「物の性質において、負[の数]は平方[の量]ではないので、平方根はもたない。」

 算術の演算において、彼は最初に乗法を扱っています。それから順に、除法、平方、平方根、立方、立方根、それから級数の総和という課題を考えます。

 分数の扱いで最も著しい特徴は、除数をひっくり返すことです。その規則は次のように書かれています。「除数の分母を分子に(そしてその逆)した後、その時に行われる演算は[分数の]乗法と同じように行う。」この工夫は、他の資料から、私たちは東洋で用いられたことを知っていますが、16世紀にヨーロッパで再び採用されるまで失われた技術となったことは奇妙なことです。

 すべてのことを考慮にいれますと、マハーヴィーラの著作は、恐らく3世紀に生きていたバースカラの著作を除けば、ヒンドゥー数学への貢献という意味では最も著しいものであるでしょう。マハーヴィーラは中国の学者の著作を知っていたかも知れません。なぜなら、彼が円の弓形の面積に与えている数値は、張蒼(Ch'ang Ts'ang)によって6世紀前すでに与えられていたものだからです。しかし、いずれにしろ彼は科学の学識ある人でありました。