ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その2)


 アウグスティヌスの音楽論

 アンブロシウスの弟子、アウグスティヌスは音楽に非常な関心を示しています。
 神を賛美することの大切さを説き、詩編を引用しながら一連の説教を行っています。「詩編講解(Enarrationes in psalmus)」にまとめられていて、貴重な資料となっています。
 「音楽論(De Musica)」は、自由学芸に関する著作の一部として構想されたものです。音楽の定義として、音楽(ムシカ)とは「正しく拍子をとる知識 (scientia bene modulandi)」と書かれています。リズム論だけで、旋律論は書かれていません。
 12世紀後半、パリ楽派がオルガヌムの新しいリズムを考案したとき、このアウグスティヌスのリズム論が背景にあったことは間違いないでしょう。

 自由学芸(アルテス・リベラーリス)(自由七科)

 トリヴィウム:言葉に関するもの
 クァドリヴィウム:数の学問、算術、幾何学天文学、音楽
 音楽は芸術としての音楽ではなく、「音」に関する学問。ピュタゴラスの韻律論を中心とする古代ギリシアの考え方に基づいています。

 ボエティウスとカッシオドルス

 古代ギリシアの思索原則をラテン社会に紹介したのが、ボエティウスとカッシオドルスです。
 ボエティウスの「音楽教程(De institutione Musica)」は、中世で最も重要な自由学芸の教科書であり、中世音楽に多大な影響を与えました。
 ポリフォニーで、同度、完全4度、完全5度、オクターヴが協和音で、3度や6度が不協和音とする原則などがそうです。