◆ノートル・ダムのオルガヌム◆


 ◆ノートル・ダムのオルガヌム

 リガトゥーラが、今や、メリスマ音楽や器楽音楽で主として用いられるようになっていました。リガトゥーラは、この時期、--「ノートル・ダム・ポリフォニー」--というフランスの聖堂音楽の傑出した巨匠、レオニヌスとペロティヌスの作品の中で、大いに取り入れられました。私たちは、これらの作曲家のことは、名前以外にはほとんど知らないのですが。そのわずかの知識は、イギリス人、クッスメイカー(Coussemaker)の「Anonymous IV」による論文「メンスーラとディスカントゥスについて(De mensuris et discantu)(1275年頃)からのもので、彼は、私たちにこう語っています。

 巨匠レオニヌスは、神の礼拝を強めるために、グラドゥアーレとアンティフォナリー(交唱聖歌集)のためのオルガヌム大曲集を書いた優れたオルガニスタ(オルガヌム作曲者)であった。これは、偉大なペロティヌスの時代まで使用された。ペロティヌスは、それを短くし、一層優れた多くのクラウスラプンクトゥムを作った。というのは、彼は、優れたディスカントゥスの作曲家であり、レオニヌスより優れていたから。・・・事実、この巨匠ペロティヌスは、多くの旋律のフィギュレーション(装飾)のある優れたクァドルプルム(quadruplum)、すなわち「Viderunt」「Sederunt」を、さらに、多くの非常に有名なトリプルム(triplum)すなわち「Alleluia:Posui adjutorium」「Nativitas」などを作曲した。彼は、また、「Salvatoris hodie」のような三声のコンドゥクトゥス、「Dum sigillum summi patris」のようなニ声のコンドゥクトゥス、「Beata viscera」「Justitia」などのような他の多くのものとともに単声のコンドゥクトゥスも作曲した。それら、また巨匠ペロティヌスの曲は、ロベルト・デ・サビローネの時代まで使用された。そして、[特に?]パリの大教会、処女聖母マリア(the Blessed Virgin Mary)の合唱団では、彼の時代から今日に至るまで使用されている。

 これに先立つ節では、作者は、「レオ(Leo)」と彼はここでは呼んでいるのですが、レオニヌスは、描かれたモーダル・リズムの記譜だけにしか精通していなのですが、一方、ペロティヌスの方は、純粋に「定量的(mensural)」と呼びうるより自由な形式を知っていたと語っています。彼については、私たちは、合理的な推論はできるとしても、彼のことはまったく知りません。ペロティヌスと彼の極めて優れたクアドルプルム(quadruplum) (四声のオルガヌム)は、Anonymous IVだけでなく、ヨハネス・デ・ガルランディア(Johannes de Garlandia)によっても言及されていますが、彼もまた、幽霊のような人物で、彼については5つ以上の人物像が提出されているほどです。