◆器楽のモテトゥス◆


 ◆器楽のモテトゥス◆

 「Ypocrite/Velut stelle/Et gaudebit」の元の曲は、クラウスラでした。Fでは、言葉のないドゥプルムで、テノールはモテトゥスの2倍演奏されます。W2には、この編曲があり、その中でドゥプルムは「Virgo, virginium regina」で始まるテキストを持つモテトゥスに、また、そのモテトゥスがプロヴァンス語である不幸な愛の歌である世俗の二つ目のモテトゥスになっています。新しいトリプルムは、フランス語で幸せな愛を歌っています。

 実際のところ、その曲の最も一般的な形は、「Ypocrite」トリプルムのあるなしにかかわらず、「O quam sancta」で始まるモテトゥスを持っています。クラウスラのサン・ヴィクトール(San Victor)コレクションの中では、それは欄外に書かれたプロヴァンス語のテキストを伴った二声部の曲になっています。「O quem sancta」のモテットのこの最後のヴァージョンが純粋に器楽演奏のためのものであったと仮定することは不合理なことではないでしょう。実際に、サン・ヴィクトールのすべてのコレクションがそうであったかも知れないのです。また、それを支持する根拠もあります。

 Bibl.Lib.Harley 978, これもまた「Sumer is icumen in」を保存している13世紀中期のイギリスの写本ですが、その中のテキストのない3つの曲には、「Cantus superior」と「Cantus inferior」と印された2部があり、ほとんど確実に器楽用のものです。恐らく、テキストのないコンドゥクトゥスのカウダであったでしょう。テキストのない音楽が、すべて器楽用であったと考えるのはばかげているでしょうが、リガトゥーラを自由に用いた文字のない音楽(musica sine littera)の記譜は、ケルンのフランコの体系的な計量記譜法の基礎でありました。彼の「計量音楽技法(Ars cantus mensurabilis)」は、1267年以前に書かれたように思えます。