ルネサンス初期の教会音楽(その8)


 オケゲムのモテトゥス

 ミサ曲以外のラテン語歌詞による作品で、確実にオケゲムの作と確認されている曲は、6曲にすぎません。異論がありますが、一応、彼の作と見なされている曲を含めても、全体で10曲です。つまり、オケゲムの教会音楽作品は、合わせてミサ曲13曲(3曲は不完全な曲)とその他には10曲と意外に少ないのですが、そこに示されている個性的な創意と工夫を凝らした技法は、彼がこの時代を代表する作曲家で、完成に近づきつつあったルネサンスポリフォニー音楽の進展に大きな役割を果たしました。

 モテトゥスとモテット

 この時代以降、ミサ通常文は、ミサ曲としてまとめて作曲されるのが一般化し、単独の通常文に作曲するのは、比較的小数になっていきました。一方、ミサ固有文や聖務日課のための賛歌や交唱も盛んに作曲されるようになり、それらラテン語の歌詞による礼拝用作品をまとめて呼ぶ用語が必要となり、それに「モテット」という言葉が使われるようになりました。
 すなわち、ラテン語の礼拝用作品は、大きくミサ曲とモテットに分類されるようになりました。これまでのモテトゥスとは異なる新しい「モテット」という概念です。(17世紀以後のモテットは、必ずしもラテン語によるとは限らなくなります)