◆ヴィトリのモテトゥス◆


 ◆ヴィトリのモテトゥス◆

 専門的なことになりますが、2つの特徴を指摘しなければなりません。一つは、より小さな音価の記譜法、3つ目のモテトゥス "Quare fremuerunt"のセミブレヴィス・カウダータ(semibreves caudatae)(符尾のついたダイヤモンド形のセミブレヴィス)です。ヴィトリは決して採用しなかったのですが、セミミニマ(semiminima)(現代の8分音符に似た小さな「旗(フラグ)」のついたミニマ)の可能性を認識していました。

アルス・ノヴァの理論は、やがて、モドゥス・ペルフェクトゥス(modus perfectus)(ロンガ=3ブレヴィス)とモドゥス・インペルフェクトゥス(modus imperfectus)(ロンガ=2ブレヴィス)やテンプス・ペルフェクトゥス(tempus perfectus)(ブレヴィス=3セミブレヴィス)とテンプス・インペルフェクトゥス(tempus imperfectus)(ブレヴィス=2セミブレヴィス)だけでなく、プロラチオ・マイオール(prolatio major)(セミブレヴィス=3ミニマ)とプロラチオ・ミノール(prolatio minor)(セミブレヴィス=2ミニマ)でも受け入れられました。

ヴィトリのものとされるモテトゥスの一つ "Garrit Gallus/In nova fert/Neuma"では、テノールのモドゥス・ペルフェクトゥスからモドゥス・インペルフェクトゥスへの一時的変化は、赤く記譜されています。ヴィトリは、その手順を、論文「アルス・ノヴァ」の中で、まさにこのモテトゥスに触れながら説明しています。 また、この同じモテトゥスは、他の重要な技法の革新、アイソリズムとして知られる構造的技法ですが、それについても例証しています。これは、モーダル・リズムのテノールの繰り返されるリズム・パターンの拡張であり、精巧化でした。

 最初、アイソリズムはテノールだけに用いられました。しかし、フォヴェール以後のヴィトリのモテトゥス "Vos qui admiramini/Gratissima virginis/Gaude gloriosa"では、テノール音価は、曲の後半で半音減ぜられ、トリプルムとモテトゥスのホケトゥスもアイソリズム的に扱われて
います。