数学史 093 ◆12・13世紀スペイン◆


 ◆12・13世紀スペイン◆

 12世紀、スペインの数学の研究は、その前の時代の人々より遙かに恵まれていました。アラビアの著述家たちの中で、第一の者は(中世には一般にこう呼ばれていましたが)、アヴェロエス(Averroes)(1126年頃-1198/9年)でした。彼は天文学と三角法について著述しています。彼の同時代人で、学問的に最も優れた人は、アべンパセ(Avenpace)、キリスト教徒たちによってこう呼ばれていましたが、彼は、セヴィリヤとグラナダに 1140年頃生きていて、幾何学について著述しています。

 しかし、先の世紀と同じように、この世紀も、数学の発展に最大の寄与をしたのは、ヘブライの学者でした。ラビ、ベン・エズラ(Rabbi ben Ezra)を別にしても、二人の学者を特別に取り上げるのに値します。マイモニデス(Maimonides)(1135年-1204年)、コルドバ生まれ、スルタンお抱えの医師で、優れた天文学者であった人物と、ヨハネス・ヒスパレンシス(Johannes Hispalensis)(1140年頃活躍)です。彼は、キリスト教の信仰を告白し、算術と占星術について著述し(1142年)、様々なアラビアの数学に関する著作をラテン語に翻訳しました。

 同じ世紀、それほど著名ではありませんが、他にも様々なユダヤの学者がいました。例えば、サムエル・ベン・アッバス(Samuel ben Abbas)。彼は、算術、ヒンドゥーの数詞とその用法、代数そして幾何学について著述しています。

 13世紀には、アラビア語からヘブライ語になされた様々な翻訳が見られます。そして、その何人かの翻訳者が知られています。これらの中に、モーゼス・ベン・ティボン(Moses ben Tibbon)がいます。彼の父親と祖父は、哲学及び科学(学問)の著作をアラビア語からヘブライ語に翻訳した人として有名でした。彼は、その世紀の中頃、積極的に仕事をし、アルペトラギウス(Alpetragius)の天文学と恐らく後述のアル・ハッサル(al-Hassar)(1200年頃)の算術を翻訳しています。