随想 094 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問(その4)◆


 ◆遺伝子組み換え食品に関する20の質問◆


Q5. 人間の健康に関する懸念の主要な問題は何か?

 理論的な議論が、幅広い範囲の局面でなされている一方で、論争となっている3つの主要な問題は、アレルギー反応を引き起こす傾向(アレルギー誘発性(allergenicity))、遺伝子導入(gene transfer)と異系交配(outcrossing)である。

 アレルギー誘発性:原理的に言うと、一般のアレルギー性食物からの遺伝子導入は、それが導入された遺伝子のタンパク質産生が、アレルギーを引き起こさないことが証明できなければ、阻止される。伝統的に開発された食物が、一般的にアレルギー誘発性のテストは行われない一方、遺伝子組み換え作物のテストの手順は、国連の食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)とに評価されている。現在、市場に出回っている遺伝子組み換え作物には、いかなるアレルギー性の影響も見いだされていない。

 遺伝子導入:遺伝子組み換え食物から身体の細胞や消化管(胃腸管)内のバクテリアへの遺伝子導入は、もし導入された遺伝子の物質が人間の健康に悪影響を与えるなら、懸念を引き起こすだろう。これは、遺伝子組み換え作物を創り出すのに使われた抗生物質耐性遺伝子が、万一遺伝子導入されるようなことがあると、特に関連があるだろう。遺伝子導入の可能性は低いが、抗生物質耐性遺伝子を用いない技術が、最近の FAO/WHO 専門家パネル(専門委員会)では、推奨されている。

 異系交配:これまでの伝統的な一般の種からできた作物と遺伝子組み換え植物を育てた作物とが混ざることだけでなく、遺伝子組み換え植物の遺伝子がこれまでの一般的な作物や野生の関係する種に交じることも、食物の安心安全性に間接的な影響を与えているかも知れない。このリスクは、アメリカ合衆国で、飼料用のためだけに認可されたタイプのトウモロコシの痕跡が、人間の消費のためのトウモロコシ製品にあったことが示しているように、現実的なものとなっている。国によっては、遺伝子組み換え作物とこれまでの伝統的な作物とを栽培する畑を明確に分けることを含め、混入を減らすための戦略を打ち出している国がいくつかある。

 市場流通後も遺伝子組み換え作物製品の安全を継続して監視することの実行可能性と方法は、現在議論中である。