◆ギリシア--タレス◆


ギリシア--タレス
 
 さて、今回からギリシア数学について少し詳しく見ていくわけですが、ギリシア数学には、大きく分けて3つの重要な段階があります。第一は、ピュタゴラス(派)の影響の及んだ時代。第二は、プラトンとその学派に支配された時代。第三は、ギリシア化(ヘレニズム化)されたエジプトで繁栄し、その影響がシチリアエーゲ海諸島、パレスチナに及んだ時代です。
 
 天文学幾何学、そして特に数の理論を統合したものとしての数学全般に、何らかの学問的関心を抱いた最初のギリシア人は、タレスでありました。ヘロドトスは、タレスフェニキアの出であったと語っているのですが。
 
 タレスは、若い頃商人で、中年になって政治家になり、晩年は数学者、天文学者、哲学者でありました。商人としての冒険の中で、彼は大きな成功を収めたように思えます。アリストテレスは、彼が、オリーブの豊作が見込まれるときに、ミレトスとキオスのオリーブ圧搾機のすべてをいかに自分の手中に収め、オリーブの季節が来るといかにそれらを転貸ししたかを語っています。
 
 当時、交易は名誉ある職業で、タレスは交易の目的でエジプトに行ったように思えます。初期の著述家たちは、また、クレタとアジア(中近東)を訪れたとも語っています。このようにして、イオニア学派を創設するのに必要な富を蓄積したのかも知れません。しかし、彼は学ぶことを楽しみ、彼がギリシア七賢人の第一の者としてあげられるほどの名声を得、ギリシア天文学幾何学、算術の父と見なされたのは、この学ぶという道楽からでした。