中世からルネサンスへ(その3)


 14世紀フランスのその他のミサ作品

 14世紀フランスのポリフォニー音楽には、組曲風ミサ以外にミサのために書かれた単独作品もかなり見つかっています。ノートルダム楽派とは対照的に、固有文は姿を消し、通常文ばかり目立つようになっていますが。
 ポリフォニーによる通常文は、2世紀以前のアキテーヌポリフォニーから続いた伝統です。
 3声部のものがほとんどで、3,4声部の作品には、モテトゥス様式で書かれたものもあり、中にはイソリズムの技法を使った例も見られます。
 ミサ通常文の多くは、当時の世俗歌曲の様式の影響を受け、装飾的な動きの上声部を、1つあるいは2つの低い声部が支えるという書法になっています。
 マショーやその後継者たちのシャンソンに比べると、リズムの動きも曲の構成も単純です。さらに単純な様式として、いささか古風なコンドゥクトゥスの書法を応用したものもあります。

 14世紀フランスのミサ通常文は、
 1)モテトゥス様式
 2)カンティレーナ様式またはディスカント様式
 3)コンドゥクトゥス様式または同時様式
 に分類されます。

 マショーの後継者たちは、アルス・スプティリオールの作曲家ですが、シャンソンを多く作曲し、教会音楽はほとんど残していません。
 フィリップ・ダ・カゼルタが3声のクレド、マテオ・ダ・ペルージャがグロリアを5曲、ハート型や丸型の楽譜で有名なボード・コルディエも3声のグロリアを残しています。

 トレチェントの音楽家たち

 14世紀イタリアのトレチェントの音楽家たちは聖職者が多いのですが、アンドレア・デ・セルヴィ、ヤコポ・ダ・ボローニャ、ジョヴァンニ・ダ・カッシャ、フランチェスコ・ランディーニなどの代表的作曲家の作品は、すべて世俗歌曲ばかりです。わずかに礼拝のためのポリフォニーがあります。

 フィレンツェのミサ曲

 ひとつだけ意図的に通常文を組み合わせたミサと見なされている作品。複数の作曲家の作品を寄せ集めたもの。作曲者全員の共通の出身地から「フィレンツェのミサ曲」と呼ばれます。

 パルトロメオ・ダ・ボローニャの組ミサ

 世俗歌曲の様式を取り入れたミサ通常文が14世紀から15世紀初頭にかけてイタリアの作品にしばしば見られます。
 3声のグロリアとクレドの2曲が一組として原典に収録されています。彼自身作曲のバッラーダに基づくものです。16世紀盛んになるパロディ技法の先駆的な例です。