◆グイード・ダレッツォとヘクサコード◆


 ◆グイード・ダレッツォとヘクサコード◆

 グイードは、理論家ではなく、実際的な教育家(pedagogue)で、中世すべての教授法の基礎となった彼の方法は、先進的な記譜体系というだけでなく、はるかに多くのものをその中に含んでいます。それは、フクバルトのTTSTTのヘクサコードの概念に基づいており、彼は、それを3つの位置で考えていました。

ヘクサコルドゥム・ナトゥラーレ(hexachordum naturale=自然なヘクサコード)cdefga;ヘクサコルドゥム・ドゥルム(hexachordum durum=硬いヘクサコード)GABcde;ヘクサコルドゥム・モッレ(hexachordum molle=軟らかいヘクサコード)fgab♭c’d’;一つのヘクサコードから別のヘクサコードへの「移調(Mutation)」は、双方のヘクサコードに共通の1音、あるいは2音以上の音を軸としてなされました。

彼は、モンペリエ写本425の中のホラティウスの頌歌(Ode.IV,II)、その中で詩人はフィリス(Philis)と9年もののアルバの葡萄酒の入った水瓶をともに飲もうと招待しているのですが、その曲の旋律を借りて、彼の目的にそぐわなかった("Est mihi nonum"への)最初の7音を変えています。そして、その旋律を有名な聖ヨハネの讃歌の言葉に適合させました。

こうして、彼は、各行が先の行よりヘクサコードで1音ずつ高くなる曲法を編み出し、各行の最初の音節にちなんで音に名前をつけています。

 Ut Queant laxis
 Resonare fibris
 Mira gestorum
 Famuli tuorum
 Solve polluti
 Labi reatum
 Sancte Johannes

「硬い」また「軟らかい」ヘクサコードのためにその名の意味は変わってしまいましたが、グイードは、現代のフランス語とドイツ語の多くの専門用語の創始者となりました。たとえば、フランス語の utは、常にCなのですが、グイードでは、ヘクサコードの位置に応じて、Cのときもあれば、GのときもFのときもありました。後に「Sancte Johannes」の頭文字--S.I.--が便宜的に Siになります。

この各行の最初の2文字、すなわち、Ut, Re, Mi, Fa, So, La, Si(Sancte Johannesの最初の一文字ずつ)から、ドレミファソラシが生まれたことは皆さんもよくご存じだとは思いますが。(Utは、イタリアでは Dominusの Doにとって代わられます)