◆翻訳者たちの世紀◆

◆翻訳者たちの世紀◆ 12世紀は、キリスト教ヨーロッパにとって、9世紀が東方イスラム教世界においてそうであったのと同じ関係、翻訳の時代でした。バグダードの場合は、これらの翻訳はギリシア語からアラビア語への翻訳でしたが、キリスト教ヨーロッパの場…

◆14世紀イギリス音楽◆

◆14世紀イギリス音楽◆ イギリス音楽は、イタリア音楽より遙かにフランス音楽と緊密な関係にありました。「Triumphat hodie/Trop avet fet/Amy」でのように、フランスの世俗のテノールを宗教的モテトゥスに用いさえしています。それは、Oxford, New College…

明日から5月です。5月5日は子供の日ですが、今年は立夏でもあります。暦の上ではもうすぐ夏(初夏)。気温も随分と上がってきました。一年で一番気候のいい時期ですね。 昨日からゴールデン・ウィークも始まりました。戸外を元気に歩き回りたいと思う私で…

◆庭に咲く花◆

◆庭に咲く花◆ 暖かくなってきました。明日から5月ですね。 気温も20度を超える日が多くなってきました。今年は、5月5日が立夏、やがて暦の上では夏、いよいよ初夏の到来です。あちこちで花が咲き乱れているのが目につくようになってきました。それで、…

◆リトモマキア◆

◆リトモマキア◆ 前回、ヘルマヌスス・コントラクトゥスのところで、リトモマキアという数のゲームの話が出てきたのですが、11世紀と言えば、リトモマキア(rithmomachia)という数のゲームのことに触れなければならないでしょう。これに関する最も初期の論文…

◆フランチェスコ・ランディーニ◆

◆フランチェスコ・ランディーニ◆ フランスの影響は、トレチェント最大の巨匠、フィレンツェの盲目のオルガニスト、フランチェスコ・ランディーニ(Francesca Landini)(1335年 - 1397年)の作品の中で一層明らかになります。彼の作品の多くは、ポリフォニーのバ…

東京では、桜が満開に近いというニュースがあったりしますが、こちらでは、まだ3分から5分咲きというところでしょうか。今日は、珍しく冷たい雨が降っていたりします。 と言っても「花七日」という言葉があるように、一週間もすれば散ってしまうかも知れま…

◆ミカエル・コンスタンティヌス・プセッロス◆

◆ミカエル・コンスタンティヌス・プセッロス◆ 今回は、数学史でミカエル・コンスタンティヌス・プセッロス(Michael Constantine Psellus) (1018-c.1078) が出てきましたので、今日は、そのプセッロスを取り上げてみましょう。生没年が、本文と少しずれていま…

◆ミカエル・コンスタンティヌス・プセッロス◆

◆ミカエル・コンスタンティヌス・プセッロス◆ ゲルベルトの数学の弟子で最も優れた人は、パリのベルネリヌス(Bernerinus of Paris)でした。彼はゲルベルトの計算法を説明した算術を書いていますが、彼の生涯についてそれ以上のことは知られていません。 11…

◆トレチェント(14世紀)マドリガーレ◆

◆トレチェント(14世紀)マドリガーレ◆ イタリアの世俗ポリフォニーを含む最も初期の資料は、ヴァチカン写本(Vatican codex), Rossi 215,で、恐らく、1330年頃のパドヴァの曲集が収められているのでしょうが、29の作曲者不詳の曲を含み、その一つがすで…

毎月30日発行の MUSICA MUNDANAですが、2月は月末に発行することにしているのですが、うっかり3月になってしまいました。今年はうるう年で、1日余裕があると思ったのがいけなかったのかもしれませんね。バックナンバーを見てみますと、2005年も3月…

◆パドヴァのマルケットゥス◆

◆パドヴァのマルケットゥス◆ 今回は、音楽史ではパドヴァのマルケットゥス、数学史ではゲルベルト(後のシルベステル2世)という興味ある人物が登場していますが、ここで、パドヴァのマルケットゥスについて、少し詳しく見ていくことにします。 パドヴァの…

 ◆ゲルベルト(ジェルベール)◆

◆ゲルベルト(ジェルベール)◆ とは言っても、この時代は、まだ中世の前の世紀の精神によって支配されていました。「信仰が知性を打ち負かす」また「権威は研究の敵となった」「学者たちは教師に退化した」「学問は錬金術と占星術の泥沼の中に自らを失い、忠…

◆初期イタリアのポリフォニー◆

◆初期イタリアのポリフォニー◆ 全般にフランスのアルス・ノヴァ、特にマショーの影響がいつどのようにイタリアのポリフォニーに及んだのかということは、「謎めいた問題であるが、全く推測によらなければならないというものでもない。」といいます。14世紀…

2008年もはや1ヶ月が過ぎました。 早いものです。あと数日で節分、そして立春ですね。庭では、クロッカスが、芽吹いています。2月には花を咲かせるのではないでしょうか。というわけで、随想ではクロッカスを取り上げてみました。 では。

◆クロッカス◆

◆クロッカス◆ Crocus (複数: crocus, crocuses) : クロッカスは、多年性の花の1種で、中央及び南ヨーロッパの沿岸及びアルプス山麓地方(エーゲ海の島々も含む)、北アフリカ及び中東、中央アジア全域から中国西部にかけての広い地域を原産地とする。 サフ…

◆11世紀 - 宗教的政治的影響◆

◆11世紀 - 宗教的政治的影響◆ さて、今回から11世紀以降のヨーロッパに入ります。 紀元1000年紀の間、キリスト教が一般の人々にどれだけの影響を及ぼしていたのか言うことは困難です。歴史家たちは、以前考えられたほどには「千年の恐怖(terreur de l'an…

◆ミサの編集とマショーのミサ◆

◆ミサの編集とマショーのミサ◆ こうしたミサの編集は、アヴィニョンの教会音楽に人々が期待するように、非常に様式が保守的です。3つの声部すべてで多くの一音対一音の書法がみられ、上の一つあるいは二つのパートで装飾のあるところだけ一音対一音の書法で…

今日は、12月30日。2007年もいよいよ残すところあと僅か2日となってしまいました。 結局、何も変わることなく一年が過ぎてしまった感じですが、こんなことで本当にいいのでしょうか。来年こそは、何かを見いだしたいと思っている私でありました。 …

 ◆ロスヴィータ◆

◆ロスヴィータ◆ 数学史で取り上げたロスヴィータについてもう少し書いてみることにします。 ガンデルスハイムのロスヴィータ(Hrotsvit of Gandersheim)は、紀元935年から1000年までサクソニー(北ドイツの地域)に住んでいた。彼女の名前の綴りは、これ以外…

◆ロスヴィータ◆

◆ロスヴィータ◆ ロスヴィータ ザクセンのガンデルスハイム(Gandersheim)のベネディクト会修道院の学識ある尼僧ロスヴィータ(Hrotsvitha)の物語によって、この時期の不毛な数学の分野にある程度の光が投げかけられています。彼女はいくつか戯曲を書き、その中…

◆典礼の通常文◆

◆典礼の通常文◆ 典礼の通常文の進化は、ゆっくりとした過程でした。クレドは、11世紀の初めになってやっと一般的なミサの一部となりましたし、通常文の単旋律聖歌、そのテキストの作曲は(トロープスを除けば)、(教会)暦を通じて変えることはできず、そ…

気が付けば、あと2日ではや12月。あと1ヶ月で2007年も終わりです。何もしないうちに、また一年が過ぎてしまったと悔いてしまいそうな私です。 随想にも書きましたが、今年は12月2日からアドヴェントですね。クリスマスまでの期間は(そして、年末…

◆アドヴェント◆

◆アドヴェント◆ 日本では、12月になると「師走」となり年末の慌ただしい季節の到来ですが、西洋では、アドヴェント・シーズン(待降節とか降臨節)の到来です。今年は、12月2日の日曜日がアドヴェントの最初の主日(日曜日)ですね。 というわけで、今…

◆イギリスの学問の衰退◆

◆イギリスの学問の衰退◆ アルクィンの死後、カンタベリーの聖アウグスティヌス(オーガスタン)(604年あるいは 613年)と共にブリテン島で始まった輝かしい時代は、それが始まったのと同様突然幕を閉じます。デーン人の侵略が、知的発展を促した安全な世界とい…

◆マショー◆

◆マショー◆ ヴィトリのかなり若い同時代人マショーは、彼と同様シャンパーニュの生まれで、もう一人の諸王に仕える教会人であり詩人で作曲家であったのですが、ヴィトリより多作で広く旅した人です。ヴィトリは、アヴィニョンの教皇に王の使節として送られま…

随想で十三夜を取り上げました。 中秋は雨で月を見ることはできませんでしたが、十三夜は雲一つない空に月が煌々と輝いておりました。 「中秋の名月、十年に九年は見えず」と言う言葉があるそうですが、それに対して、十三夜は「十三夜に曇りなし」だそうで…

◆十三夜◆

◆十三夜◆ 中秋(旧暦8月15日)とともに、お月見の風習がある十三夜(旧暦9月13日)ですが、中秋の名月が中国から伝来したのに対し、これは、日本独特の風習だそうで、一説には宇多法皇が九月十三夜の月を愛で「無双」と賞したことが始まりだとも、醍醐…

◆ヨークのアルクィン◆

◆ヨークのアルクィン◆ 数学史上、次に偉大なヨーロッパの学者はアルクィン(Al'cuin)(735-804年)です。ベーダ(Bede)の死の年に生まれ、ベーダほどの学者ではありませんでしたが、活動家であり、教会においてだけでなく国家においても優れた才能を見せました。…

◆ロバーツブリッジ写本(その2)◆

◆ロバーツブリッジ写本(その2)◆ この写本で注目すべき点の一つに、ムシカ・フィクタ(musica ficta)、中世とルネサンスの音楽研究をずっと厄介なものにしてきた臨時記号を「暗示する」ものを挿入するというあの実践を伴うもののことですが、その扱いがあり…