2006-01-01から1年間の記事一覧

グレゴリオ聖歌の変容(その1)

キリスト教の音楽が楽譜として残るようになるのは、9世紀半ば以降のことです。 トロープス すでに存在する聖歌の旋律に新しい歌詞を書き加えたり、そのために旋律の一部をくり返してより長い歌詞を付けたり、さらに新しい旋律を新しい歌詞付きで挿入したり…

ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その5)

ラテン語による聖歌の伝統 シャルルマーニュ(カール大帝)が、ローマ教皇公認の聖歌を歌うことを奨励し、時に強制した結果、それ以前の伝統的ラテン系聖歌は姿を消していきます。 グレゴリオ聖歌以前のローマ起源の聖歌である古ローマ聖歌であるとか、ガリ…

ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その4)

聖歌の楽譜 9世紀半ばから聖歌の旋律を書き留める様々な工夫がなされるようになります。ネウマ譜として知られているものですが、初期には言葉のアクセントやニュアンスを表記する傾向がありました。地方差が大きく、各地で独自に発展していたことがわかりま…

ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その3)

全ヨーロッパへの宣教の広がり イベリア半島は、数世紀にわたってイスラムの支配が続きますが、そこでキリスト教を守る人々は、「アラブの中のキリスト教徒」と言う意味で「モサラベ」と呼ばれます。 5・6世紀は、アイルランド出身の修道士たちの活動が目…

ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その2)

アウグスティヌスの音楽論 アンブロシウスの弟子、アウグスティヌスは音楽に非常な関心を示しています。 神を賛美することの大切さを説き、詩編を引用しながら一連の説教を行っています。「詩編講解(Enarrationes in psalmus)」にまとめられていて、貴重な資…

ローマ教会とグレゴリオ聖歌の成立(その1)

ギリシアからローマに伝えられたキリスト教は、さらにヨーロッパ各地に伝播していきます。その共通語としてラテン語が用いられました。 最初は、ローマ典礼、ミラノ典礼、ガリア典礼、ケルト典礼などの多種多様な典礼が発展していました。 聖ヒエロニムスが…

初期キリスト教会の音楽(その4)

アルメニアとグルジアの教会 歴史上最初のキリスト教国家は、アルメニアです。 国王ディリダテス3世が、301年に改宗します。 9世紀以降、アルメニア独特の楽譜が現れますが、正確に音程を記すようなものではなく、節回しやアクセントの付け方を示したも…

初期キリスト教会の音楽(その3)

迫害と分裂 キリスト教徒に対する迫害は、教会形成期からすでに始まっており、ステパノ(ステファヌス)が最初の殉教者となりますが、本格的迫害は、ローマに伝えられてからで、64年に発生したローマの大火を口実に行った皇帝ネロの迫害に始まるとされてい…

初期キリスト教会の音楽(その2)

初期キリスト教会の伝統 今日なお、それぞれの伝統を守り続けている例があります。 西シリアのヤコブ派教会(シリア正教会)では、アラム語の聖歌が歌われています。 アルメニア教会の聖歌は、古アルメニア語。 南エジプトのコプト教会は、アラビア語。 エチ…

8月もいよいよ終わり。このところ、秋風が感じられるようになってきたような気もしますが、まだまだ、暑い今日この頃。涼しくなってから暑さの疲れがどっと出るという話もあります。 お身体、くれぐれもご自愛のほど。

◆Google More◆

◆Google More◆ CNET Japanに、 Googleの「Writely」がトップ--オンラインワープロアプリの比較評価 なんて記事があり、 「この3月にGoogleに買収されて以来、新規ユーザーの受付を停止していたオンラインワープロアプリの「Writely」が、昨晩あたりからまた…

◆マハーヴィーラの著作◆

◆マハーヴィーラの著作◆ 著作(ガニタ・サーラ・サングラハ)自体は9章からなっています。第1章は序論(導入)で、主として用いられる単位、演算、数え方(命数)、負の数と零に言及しています。8つの数の演算法が与えられていますが、加法(級数を除く)と…

◆音価の測定◆

◆音価の測定◆ ディスカントゥス(Discantus)の著者は、他の点でまた、私たちに有益な情報を与えてくれています。例えば、彼は、まだ、三度を不協和音とみなしている一方で、恐らく、彼に非常に近い同時代人であろうと思われる 「定量音楽の様々な技法について…

Doblogに投稿

しばらく前から、Doblogへの投稿ができない状態が続いていたのですが、今日、投稿できることに気付きましたので、MUSICA MUNDANA No.65と No.66を遅ればせながらアップしました。 近いうちに No.67もアップすると思います。しばらく音沙汰なしでしたが、今後…

梅雨が明けてここ数日暑い日が続いていますが、皆さん、いかがお過ごしですか。 ただ、梅雨明け前に比べると、確かに暑くはなっているのですが、私は多少しのぎやすくなった感じはしています。 それでも少々夏バテ気味。今年の夏も何とか無事過ごしたいなと…

◆マグダラのマリア◆

◆マグダラのマリア◆ 7月22日は、マグダラの聖マリアの祝祭日だというので、それについて少々。このところ「ダ・ヴィンチ・コード」ですっかり有名になったマグダラのマリアではありますが。 悔悛者マグダラの聖マリア(St. Mary Magdelene "The Penitent"…

◆マハーヴィーラ◆

◆マハーヴィーラ◆ この時期、偉大なヒンドゥーの著述家の第三の人物は、マハーヴィーラーカーリヤ、学識あるマハーヴィーラです。彼は、ガニタ・サーラ・サングラハ(Ganita-Sara-Sangraha)を書いています。この著述家は、恐らく、今日ミソレ(Mysore)の王国で…

◆宮廷歌:その型、形式と演奏◆

◆宮廷歌:その型、形式と演奏◆ 同じ型は、プロヴァンスや北フランスそしてドイツでも見いだされます。canso(愛の歌)や planh(嘆きの歌)のような四季を通じての型だけでなく、sirvente`s(文字通りの意味は「奉仕の」)やドイツの Spruchのような政治的道…

今日は梅雨明けを思わせるような暑い一日。でも、まだ6月。南海上には、ちゃんと梅雨前線が停滞しているようです。 数日前には九州で大変な雨であったようですが、こちらはそれほどの雨は降っていません。むしろ空梅雨傾向でしょうか。 台風も2号が発生し…

◆7月4日 - アメリカ独立記念日◆

◆7月4日 - アメリカ独立記念日◆ 7月4日が何の日かご存じですか。ご存じの方はご存じの、ご存じでない方はご存じでないでしょうが、アメリカ合衆国の独立記念日なのです。知ってました? そこで、今回は、アメリカの独立記念日には、どんなことが行われて…

◆ヴァラーハミヒラとブラフマグプタ◆

◆ヴァラーハミヒラとブラフマグプタ◆ ヴァラーハミヒラ(Varahamihira)(505年頃) インドの天文学者たちの中に、ヴァラーハミヒラという名の人物が二人現れます。一人は、202年頃、もう一人は 505年頃に生きていたように思われます。この二人の学者のうち、後…

◆カンティガ、ラウダ、ソング◆

◆カンティガ、ラウダ、ソング◆ カスティリアとアラゴン宮廷によるアルビジョワ派異端への十字軍にもかかわらず、プロヴァンスの歌は、南部には生き残ります。例えば、有名なトルバドール最後の人物、ギロー・リキエ(Guiraut Riquier)(1239-1300年)は、1252年…

5月ももう終わりです。地域によっては、梅雨のはしりのように雨の多かったところもあったようですが、こちらはそれほどでもありませんでした。 6月に入るといよいよ梅雨が本格的にやって来ますが、さあ、今年はどうでしょう。雨の多い梅雨でしょうか、それ…

◆モラエス通り散策地図◆

◆モラエス通り散策地図◆ 誰かさんが、GoogleMapsEditorを使って地図コンテンツを作成していたので、私も試しに「モラエス通り散策地図」などというものを作ってみました。 これを機会に、久々に W.deモラエスの「徳島の盆踊り」を読んでみました。ちょうど、…

◆アーリヤバタの著作◆

◆アーリヤバタの著作◆ アーリヤバタの著作は、しばしば、アーリヤバティーヤ(Aryabhatiya)とかアーリヤバティーヤム(Aryabhatiyam)と呼ばれていますが、ギーティカー(Gitika)あるいはダサギーティカー(Dasagitika)という天文表の集成とガニタ(Ganita)という…

◆宮廷歌の広まり--フランスとドイツ◆

◆宮廷歌の広まり--フランスとドイツ◆ 文化史家たちは、永く「十二世紀ルネサンス」の概念を私たちに広めてきました。彼らは、音楽を考える際には、すぐに、トルバドールの歌の偉大な開花を思い浮かべます。それは、同時代のアーサー王物語が果たしたのと同じ…

4月もはや終わり。周囲の田圃では、はやくも田植えの終わっているところも目に付くようになってきました。 今日からのゴールデン・ウィーク、いろいろと予定のある人も多いでしょうね。私は、特に予定はありませんが、例年よりはまめに動き回りそうな感じで…

 ◆ verse(韻文)とprose(散文)◆

◆ verse(韻文)とprose(散文)◆ この間の英文法の問題集を読んでいると、verse(韻文)と prose(散文)は対義語だというのが出てきたのだが、子供たちに聞いてみると、韻文と散文の違いについてどうもよく分かっていない風であった。そうか、最近の子供たちは、韻…

 ◆インド(500年から1000年)◆

◆インド(500年から1000年)◆ 500年から1000年までの時代、インドには4人から5人の優れた数学者がいました。これは、二人のアーリヤバタ(Aryabhata)、天文学者のヴァラーハミヒラ(Varahamihira)、ブラフマグプタ(Brahmagupta)とマハーヴィーラーカーリヤ (Ma…

◆最も初期のトルバドール◆

◆最も初期のトルバドール◆ 俗語で書かれた歌は、主に、アキテーヌ公ウィリアム9世の下で形成され始めたラング・ドク(langue d'oc)のリムザン(Limousin)方言で書かれました。ウィリアム自身がトロバドール(trobator)で、1120年に第一回十字軍から帰還し…